『愚者‐中世からルネサンスまで』ルーヴル美術館 美術展『スタンチク』、ヤン・マテイコ、1862年 X Facebook はてブ Pocket LINE コピー 2025.01.15 目次 愚者とは中世の寓者から近代の狂人狂気の自画像展示作品関連サイト/ルーヴル美術館今月の美術展ルーヴル美術館の情報 愚者とは ルーヴル美術館で開催されている『愚者‐中世からルネサンス』展に行ってきました。愚者といっても2種類ある。先天的なものと職業的なものである。前者は、病気なので自由な言動が許されており、後者はその役割がら言動の自由がある。そもそも中世美術といえば宗教美術を思い浮かべる。しかし、この中にも愚者を表したものが沢山ある。というのも愚者とは、もともとは宗教と結びついていたからだ。『詩編』52編に『愚か者は心の中で、神はいないと言う』という一節がある。このことから愚者とは神を信じない者をいうことが分かる。 愚者の肖像画、レイヒリッヒ、1520年頃 中世の寓者から近代の狂人 その他、中世では騎士物語の『トリスタンとイゾルデ』、『ランスロット』に見られるような狂わしい恋のテーマも取り上げられている。この時代、これらの物語からインスピレーションを受けた装飾写本や象牙の美術工芸品が多数作られた。そして14世紀には、神秘的で象徴的な存在であった愚者が社会に溶け込むようになる。彼らは宮廷で、特別に批判や皮肉を言うことができる存在であった。これらの愚者は、道化棒、縞々の服装、頭を覆うフードや鈴などを目印としていた。その後15世紀には、カーニヴァルや伝統的な祭りで寓者の姿を多く見かける様になる。そして彼らは、宗教改革の時にも相手を罵るのに使われた。(愚者はカトリックまたはプロテスタント)この中世からルネサンスの時代、ボスやブリューゲルの作品にみられるよう、愚者はいたるところに描かれていた。近代になり欧州の宮廷では、愚者は宮廷道化師や小人に取って代わる。そして18世紀には、狂気に焦点があてられるようになる。 シャルル6世の狂気の悪魔祓い、ビアール、1839年 狂気の自画像 時系列で展示される作品の最後に、クールベの自画像『アーティスト‐驚愕』(1844年‐1848年)がある。黄色い縞模様の上着は宮廷道化師のようである。顔にかかる髪を左手で抑え、眉間にしわを寄せた額から驚きの様子がうかがえる。そして大きく見開いた両目からは、驚愕のあまり狂気になりかけている事がうかがえる。彼は、狂気になる自画像をどんな気持ちで描いたのだろうか。 展示作品 愚者が水をそそぐ蛇口、ブロンズ、1500年頃ムーア人の踊り子のロウソクたて、1500年頃卵の中のコンサート、ヒエロニムス・ボスの複写、1549年以降寓者の船、ヒエロニムス・ボス、1505‐1515年頃マキシミリアン1世の宮廷道化師の肖像画、1515年頃 関連サイト/ルーヴル美術館 Figures du Fou – Du Moyen Âge aux Romantiques 今月の美術展 『ギュスターヴ・カイユボット』オルセー美術館 – パリの美術展めぐり ルーヴル美術館の情報 Musée du Louvre 『愚者‐中世からルネサンス』展は2月3日まで開催 開館時間 月、木、土、日曜9時から18時、水曜、金曜日は9時から21時45分まで開館、火曜閉館日(チケット販売は1時間前まで、閉館30分前から展示室閉鎖開始) 住所 Rue de Rivoli 75001 Paris 料金 大人22€、18歳未満無料 地下鉄 1番線、7番線Palais-Royal/Musée du Louvre駅、14番線Pyramides バス 21番、27番、39番、67番、68番、69番、72番、74番、85番、95番 駐車場 1 avenue du Général-Lemonnier 7時から23時(ショッピングセンターCarrousel du Louvre 入口)