パリのオランジュリー美術館で開催されている『ロバート・ライマン』展に行ってきました。
ロバート・ライマン(1930年-2019年)は1950年代にニューヨークで活躍したにアメリカの画家である。彼は、そのキャリアを通して絵の基盤とは何かを探求する。ライマンは最も中立的という理由から、常に白い正方形の絵を制作していた。そして白いキャンヴァスを通して展示の方法、照明、素材などの絵画の構成の可能性を探索していった。
そんな彼の経歴は、音楽家から始まった。ライマンは、20代初めにジャズのサックスフォーン演奏者を目指してニューヨークに来る。そして演奏の傍ら、10年近くニューヨーク近代美術館(MoMA)で警備員として働く。ここでモネ、セザンヌ、マチスなどの欧州の巨匠と、マーク・ロスコ、ウィレム・ド・クーニング、ジャクソン・ポロック、バーネット・ニューマンなどの象徴画に興味を持つ様になる。彼は、この経験から画家になることを決意する。
ライマンは自らをレアリストと認識している。彼は自分の絵には、幻想も象徴もないと主張する。そしてあらゆるメディウム(絵の具と混ぜて使用する画材)を試し、多くのバリエーションを提案する。ライマンは、常に「動き」の視点で作品を提供している。

ロバート・ライマン、作品と空間
ライマンは、キャンヴァスの上の絵の具の厚みや様々なリズム、筆のタッチによりどのような効果が表れるかを研究していた。彼はこの実験により、絵の本質とは何かを問い続けた。
またライマンは作品の物質的または、コンセプトとしての境界はどこまでかを問い続けた。
そして1970年代から、絵を固定する方法も見えるようにしている。絵画に関わる全ての部分を見せることで、作品の周りを構成する空間も変化する。
ライマンの作品は1980年から、より彫刻的になっていく。彼の作品は固定されながらも、壁からはみ出ているものもある。そしてキャンヴァスの側面も見えるようにしている。それは、絵が木の板の上に描かれているのか、アルミ素材の上に描かれているのかを語る。このようにしてライマンは、絵画の可能性を無限大に広げていく。

ライマンとモネ
ライマンは白い絵を描いていることから、光の画家と言える。彼は影と反射を作りながら、多くの白のバリエーションをくっきりと浮き上がらせる。ライマンの絵画の表面に対する研究と境界への探求は、光の扱い方をより完璧にしていく。光は、絵画の素材に張り付き、凹凸を浮き彫りにし、絵の支持体の境界を作り出す。
そしてライマンは、光も絵を構成する素材の一部と考える。彼の作品は、照明が当たって初めて完成するという。
またライマンは、他のアーティストからの影響を受けたことを否定している。と言っても彼も美術史の中の流れにいる一人だ。彼の絵画と向き合う姿勢は、モネのメディウムの研究、絵の表面の意味について、境界についての考えと重なり合う。それに加え、作品が置かれる空間について、光の影響についての飽くなき探求心はモネとライマンに共通する。
ライマンの作品は、その限られた色と形からいつもは目を向けない絵画の構成要素を再発見させてくれる。そして作品空間とそこにあたる光は、絵画のいちばん純粋な部分に目を向けさせてくれる。

参考サイト/オランジュリー美術館
オランジュリー美術館の記事
オランジュリー美術館の情報
Musée de l’Orangerie
開館時間 月、水、木、金、土、日曜9時から18時、金曜日は21時まで開館、閉館日 火曜
料金 大人日時指定予約(18歳以上)12.50€、18歳以下の子供1人と大人1人 10ユーロ、金曜18時から21時まで 10ユーロ、18歳未満無料(身分証明書提示必要)
住所 Jardin des Tuileries, Place de la Concorde (côté Seine) 75001 Paris
地下鉄 1、8、12番線 Concorde駅