『アル・タニ・コレクション』オテル・ドゥ・ラ・マリーヌ

ヘンリー8世(イングランド王)の肖像画、ハンス・ホルバイン(子)、1550年頃 美術展
ヘンリー8世(イングランド王)の肖像画、ハンス・ホルバイン(子)、1550年頃
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パリのオテル・ドゥ・ラ・マリーヌで開催されている『アル・タニ・コレクション』展に行ってきました。

この美術館では、2011年の開館よりよりアル・タニコレクション財団と提携しました。この契約は2031年まで続きます。そのため建物内にその収蔵品を展示するスペースを特別に作りました。企画展は、年に1回作品の入れ替えがあるので、今後もご紹介します。

今回の展覧会では、英国のヴィクトリア&アルバート博物館から作品を借りています。フランスではイギリス美術のコレクションは多くありません。なのでこの時代のイングランド王の肖像画を見るだけでも行く価値があります。王様の表情だけでなく身に着けている服や、宝石などが細部まで表現された密度が高い作品です。

エドワード6世(イングランド王)の肖像画 1550年頃
エドワード6世(イングランド王)の肖像画 1550年頃
マルグリット・ドートリッシュの肖像画、フアン・パントーハ・デ・ラ・クルス、1600年‐08年頃
マルグリット・ドートリッシュの肖像画、フアン・パントーハ・デ・ラ・クルス、1600年‐08年頃

ヨーロッパのルネッサンス美術コレクション

今回の展覧会では主に、英国、イタリア、ドイツ、フランスの作品があります。アル・タニ・コレクションは広範囲の文化、文明をカバーしています。そのことから同時代の多国籍の作品を見れるのが魅力です。

また作品の種類も肖像画、宗教画、金細工、刺繍、ファイアンスなど分野も様々。これらの作品から、ルネッサンスの時期にヨーロッパで工芸品を作る技術が高度に発展していったことが分かります。

展示室の様子
アル・タニコレクション展

ルネッサンス美術工芸の特徴

異なる素材を使う美術工芸はルネッサンスの特徴です。その例として、中国の磁器と金色の銀素材の細工の装飾を付けたものがあります。またイタリアの青ガラスの花瓶に真鍮の取っ手を追加した作品も。色の対比が鮮やかですね。

そしてオウムガイを白鳥の体に見立てたり、サザエを一角獣の胴体にした装飾品もあります。動物の動き方や羽や皮膚の様子は、デッサンを重ねて研究したのでしょう。この様に貝殻などの自然の素材を使うと、人間の手では表現できない模様やいびつな形になります。このいびつさもルネッサンスの芸術家の好みでした。

明朝の水差し、金細工(1602年ー32年)はバルタザール・ホルウェック(ニュルンベルク)により付け加えられた 
明朝の水差し、金細工(1602年ー32年)はバルタザール・ホルウェック(ニュルンベルク)により付け加えられた 
フィレンツェまたはピサで作られた花瓶、1600年-30年頃
フィレンツェまたはピサで作られた花瓶、1600年-30年頃

ルネッサンスとギリシャ神話

また一角獣の装飾品もバランスを考えて作られています。ピンクの貝の上に三つまたの槍を持つポセイドンがいます。この海の神は蛇のような生き物に槍を刺しています。貝殻なのでポセイドンを加えたのでしょう。古典の題材を復活させたルネッサンスの特徴がここにも見られます。作品全体見ると、彼の突き刺す槍と反対側の一角獣の角がV字になります。この人物を加えることで作品全体の均等が保たれました。

ルネッサンス美術は見ているだけでも豪華ですね。そしてこれだけ作品が集まると圧巻です。技術的な成熟さ、その時代の趣向、古典の復活、いろいろな角度で鑑賞を楽しめます。何度見ても発見があるので、是非足を運んでみてください。

(右)一角獣、ヘンリッヒ・イッセルブルグ、1600年‐1630年頃、(左)雄鶏の塩入れ、イングランド、1560年‐70年
(右)一角獣、ヘンリッヒ・イッセルブルグ、1600年‐1630年頃、(左)雄鶏の塩入れ、イングランド、1560年‐70年
船、ブレーメン、1600年‐1615年
船、ブレーメン、1600年‐1615年
白鳥、ドイツ、1602年頃
白鳥、ドイツ、1602年頃

展示作品

聖ヒエロニムス、アレクサンドリアのカタリナ、ヴィットリオ・クリヴェッリ、1481年
聖ヒエロニムス、アレクサンドリアのカタリナ、ヴィットリオ・クリヴェッリ、1481年
コルセットの一部、イングランド、1615年頃
コルセットの一部、イングランド、1615年頃
マルグリット・レイトン、マルクス・ゲラエルツ(子)、1620年
コルセットの模様と同じ肖像画
復活、ウルビーノ、1515年
復活、ウルビーノ、1515年
筆記用具入れ、ロンドン、1520年‐27年
筆記用具入れ、ロンドン、1520年‐27年

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オテル・ドゥ・ラ・マリーヌの情報

Hotel de la Marine

開館時間 月曜から日曜10時30分から19時、金曜日は21時30分まで開館(入場は閉館45分前まで)1月1日、5月1日、12月25日は閉館

住所 2 Place de la Concorde 75008 Paris 

料金 執事のアパルトマン+サロン+ロッジアの見学大人17€、企画展+サロン+ロッジアの見学13€、サロン+ロッジア(企画展が開催されていない時期)9€、企画展+常設展23€(インターネット予約限定)、18歳未満無料、11月から3月の第一日曜日無料

パートナー特別料金 SNCF(国鉄)TGV Inouiの4日以内の乗車券を提出すると執事のアパルトマン13€、企画展11,50€、サロン+ロッジア(企画展が開催されていない時期)7,50€ ※TGV Ouigoは対象外なのでご注意ください

地下鉄 1番線、8番線、12番線Concorde駅1番線 Tuilleries駅(12番線Concorde駅は5月17日から9月21日まで閉鎖、1番線、8番線Concorde駅、1番線 Tuilleries駅は6月17日から9月21日まで閉鎖)

バス 42番、 45番、 52番、 72番、 73番、 84番、 N11番、N24

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