『テオドール・ルソー』プチパレ 美術展コンピエーニュの森の中 ピエールフォン村近くの野原 1833年 テオドール・ルソー X Facebook はてブ Pocket LINE コピー 2024.07.192025.01.16 目次 森の風景画家、バルビゾン派環境保護を訴える芸術家バルビゾン派から印象派へ風景画の発展展示作品関連記事プチパレの記事プチパレの情報 森の風景画家、バルビゾン派 パリのプチパレで開催されていた『テオドール・ルソー』展に行ってきました。テオドール・ルソーは1812年にパリで生まれ1867年に亡くなる。彼はパリ郊外のバルビゾンの森で風景画を描いていたためバルビゾン派と呼ばれている。そしてバルビゾン派で有名なのは、カミーユ・コローである。彼は1822年からこの地で活動している。ルソーはなぜバルビゾンに行ったのか。彼は1831年、33年、35年まではサロンに受かり作品を発表していた。しかし1836年から48年まで落選が続くようになる。そしてこの時期に、画家は静かなフォンテーヌブローやバルビゾンの森に行き野生の木々を描くようになる。またこの地では、コンスタン・トロワイヨンやジャン=フランソワ・ミレーなどが既に活動をしている。前者は牧歌的な生活の静けさを描き、後者は農民の労働の地を称える。そしてルソーは手つかずの自然をキャンバスに写し取っていた。近隣のフォンテーヌブローの森には、画家だけでなギュスターヴ・フローベール、ジョルジュ・サンドなどの作家がいた。そのためこれら文学者は画家とも交流があった。 環境保護を訴える芸術家 テオドール・ルソーは野外で沢山の習作を制作した後、アトリエで作品を完成させる。あまり知られていないが、画家は作品をつくる過程で様々な実験をした。その中でもアスファルトを使用した作品もあるが、このような作品は痛みやすく修復が難しい。絵画制作をしていくなか、彼は森の木が伐採されて行くのを目にする。同時にこの時期、鉄道の開通とともにパリからの観光客も増えていく。その結果ルソーは、この森の自然破壊が進んでいることを知る。彼の描く絵は、手つかずの自然の風景が殆どで、人間が描かれることはほとんどない。しかし今、その世界が破壊されようとしているのだ。人間を含む自然の要素すべてに神が宿ると信じるルソー。また彼は、人間は自然の上に立つものではないと考える。それほどまでに自然を愛していた風景画家は、芸術の名のもとにこの森の保護活動を始める。そしてこの地の芸術家たちとフォンテーヌブローの森を保護するために政府に訴える。その結果、フォンテーヌブローの森は1861年にフランスで初の芸術保護区に指定された。 バルビゾン派から印象派へ 19世紀までの多くの画家たちは、アトリエで絵画作成をしていた。しかしバルビゾン派は野外で絵画制作をする。そしてコロー、ルソー、ミレーに影響を受けた印象派も野外写生をするようになる。そのため印象派のモネ、ルノワール、シスレー、ピサロは、バルビゾン派の足跡を追っていったといえる。しかし印象派は、バルビゾン派の様の画家とは違かった。なぜならバルビゾン派が風景を写し取るのに対し、印象派はその印象をキャンバスに描いていたからだ。そして習作を重ねることはなく、直接キャンヴァスに描いていく手法が印象派の風景画の特徴になる。 風景画の発展 伝統的に絵画の主題は歴史が宗教画が一番重要で、その下に肖像画が位置する。というのも中世、近代で絵画を注文するのは教会、宮廷、貴族であった。というのも彼らは、教会や宮殿を装飾するため、自分の教養や権力を見せつけるために絵画を制作させた。そのため静物画や風景画は、偉大な主題に比べると意味合いが薄い。そしてサイズも小さい。 18世紀になりサロン(官展)が始まる。官展に出展する画家は、裕福層から注文を受けることを目標とした。また官展に受かり作品発表をしないと、画家として経済的にやっていけない。そして官展に受け入れられるには、伝統に従った主題と画法を習得しなければならない。しかし19世紀に入り、官展に落選を続ける芸術家たちが他の価値観を探求する。 その中でテオドール・ルソーも野外写生を始める。バルビゾン派そして印象派に続き風景画を専門とする画家が成功を収めるようになる。それに従い、風景画のキャンヴァスも大きなものになる。もはや風景画は内装装飾の為でなく、モチーフを通して画家の内面や感情を表現する手段となっていった。 展示作品 沼で水をのむ牛 1853年 トロワイヨン イル・アダムの森 大通り 1849年 テオドール・ルソー 牧草にいる羊の群れ 1871年 シャルル・ジャック 日暮れ フォンテーヌブローの森の出口 1849年 テオドール・ルソー 岩のある風景 1836‐40年 テオドール・ルソー 春 1868年‐1873年 ジャン・フランソワ・ミレー 妖精の池 フォンテーヌブローの森 1848年頃 テオドール・ルソー オークの池 1860年‐1865年 テオドール・ルソー オークの木の群れ アプルモン 1855年 テオドール・ルソー 森林の中の高原 フォンテーヌブローの森 1866年 テオドール・ルソー フォンテーヌブローの森の木 1640年‐1849年 テオドール・ルソー 関連記事 Exposition à Paris : Théodore Rousseau, rebelle de la peinture et écologiste avant l’heure (connaissancedesarts.com) プチパレの記事 プチパレの版画展 – パリの美術展めぐり (art-paris.net) プチパレの情報 Petit Palais 『テオドール・ルソー』展は7月7日まで開催 2024年7月26日(金)は10時から14時まで 開館時間 火曜から日曜10時から18時(チケット販売は17時15分まで、17時45分より庭と展示室の退室案内開始)、1月1日、5月1日、11月11日、12月25日閉館 住所 Av. Winston Churchill, 75008 Paris 電話 +33(0)1 53 43 40 00 (開館日の午前10時から18時まで) 料金 常設展無料 地下鉄 1番線13番線Champs-Elysées-Clemenceau駅、9番線Franklin D.Roosevelt駅 鉄道 RER C線 Invalides駅 バス 28、42、72、73、80、83、93