パリのポンピドゥーセンターで開催されている『シュルレアリスム』展に行ってきました。
展示は、シュルレアリスムの作品が時系列とテーマごとに、14のセクションに分かれている。そして『夢』、『アリス』、『森』、『夜』などのテーマごとに絵画、彫刻、写真、文学作品が混ざり合う。
シュルレアリスムは1924年、アンドレ・ブルトンにより発表された『シュルレアリスム宣言』により始まった。そして今年は、この宣言から100年目にあたる。この貴重な原本も、今回フランス国立図書館から貸し出されている。


シュルレアリスムの始まり
シュルレアリスムは、1920年代のヨーロッパの前衛芸術に見られる反骨精神がもととなっている。ダダイスムもそうであったが、芸術家や作家は19世紀終わりの合理主義の傲慢さを批判した。だがダダイスムは、ポジティブな価値を生み出すことはできなかった。そのためシュールレアリスムはダダイスムとは距離を置き、1924年に『シュルレアリスム宣言』をした。ダダイスムからシュルレアリスムに移り、新たな可能性を探ったアーティストもいる。
シュルレアリスは、作家アンドレ・ブルトンが中心人物となった。彼は、考えなしに自由に文章を書く実験をし、このムーブメントを切り開いた。この手法は、精神科の研修医時代の経験から着想を得ている。ブルトンは、精神病院の患者に接し精神自動症(オートマティスム)に没頭するようになる。その後、フロイドの夢分析や無意識のイメージの研究にも目を向け知識を広める。そして無意識についての問題は、ブルトン以外のアーティストの作品に直ぐに広まり美術、写真、映画作品など広範囲に反映されていく。


夢のメカニズムから生まれるシュルレアリスム
シュルレアリスムの芸術家は、夢のメカニズムを再現する技術を発明し、欲望を開放し作品にする。その中でもド・キリコは、シュルレアリスムの美を作り上げたことで知られている。彼の作品の様にシュルレアリスムの芸術家は、自分の意思や意識の介入を防ぐことに腐心した。そしてマックス・エルンストのコラージュ、アンドレ・マッソンのオートマティスムのデッサン、マン・レイのフォトグラフなどが、その初期の代表的な作品である。その後にジョアン・ミロ、マグリット、 ダリが、異なる要素の出会いをつくり夢のようなイメージを絵にしていく。
第1回目のシュルレアリスムの展覧会は1925年に開かれる。その後、このムーブメントは世界に広がり、36年ロンドンとニューヨーク、37年東京、38年再びパリで行われる。そして第二次世界大戦の間、大半のシュルレアリスムの芸術家たちはアメリカへ移民した。その結果、彼らはアメリカ芸術へ大きく影響を与える。ジャクソン・ポロックやアクション・ペインティングなどがその例である。またシュルレアリスムのものに対する探求は、後のポップアートにつながっていく。
マグリットやダリは、身近なものが描かれていながら想像力を膨らまし観賞できるので、現代でも人気がある。多くの人に馴染みのあるシュルレアリスムの作品の誕生を、文学作品も交えて知ることができた展覧会であった。


関連サイト/ポンピドゥーセンター
ポンピドゥーセンターの記事
ポンピドゥーセンターの情報
Centre Pompidou
『シュルレアリスム』展は25年1月13日まで開催
2030年まで工事で休館
最後の企画展は25年9月22日まで見れます。Exhibitions – Centre Pompidou