プチ・パレの版画展

聖エウスキウス、デューラーの版画、1501年頃 プチ・パレ
聖エウスキウス、デューラーの版画、1501年頃
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パリの美術館プチ・パレで開催されていた版画展に行ってきました。

今回の展覧会では、プチ・パレの版画コレクションの15世紀から20世紀の作品が集められた。その中には、デューラーレンブラントゴヤなどの名作もあり、合計200点の作品が紹介されている。

これらのコレクションの基盤を作ったのは、オーギュストウージェンヌ・デュテゥイ(1807年‐1886年)と学芸員のアンリ・ラプロウズ (1867-1925)である。

デュテゥイ兄弟のコレクションは、1万2千点に及ぶ。そしてラプロウズは、1908年「近代版画美術館」を立ち上げた功労者だ。その後、彼はその情熱で寄贈者を募い、近代版画コレクションを充実させていった。

サイ、デューラー、1515年
サイ、デューラー、1515年

プチ・パレの主要な版画コレクション

デュテゥイの版画コレクションは、質、量ともに他に類がない。そのためか、この展覧会は『白黒の宝』という題がつけられている。

プチ・パレの版画コレクションで目を引くのは、やはりアルブレヒト・デューラー(1471-1528)の作品であろう。この美術館には、デューラーの版画コレクションが264点ある。彼はドイツの画家、版画家であり幾何学と線遠近法の理論家でもあった。そのためか作品のモチーフもとても正確である。

またジャック・カロ(1592年‐1635年)も重要なフランスの版画家であった。社会の低層にいる乞食やジプシー、宮廷の道化などの主題を多く残した。プチ・パレでは、彼の700点の版画を保存している。

そしてレンブラント(1606-1669)も著名な版画のコレクショナーであった。かれは50年かけて375枚の版画を収集した。この版画コレクションから、レンブラント絵画のスタイルやイコノグラフィー、絵画の技術がどのように発展していったのか読み取ることができる。

最後にスペインの巨匠ゴヤ (1746-1828) の作品が紹介されている。デュテゥイは、ゴヤのエッチングアクアチントの二つの版画テクニックに魅了されていた。

窓際で版画制作する自画像、レンブラント、1648年
メランコリア I デューラー
締め付けの拷問を受けるもの、ゴヤ、1778年‐1785年
窓際で版画制作するレンブラント レンブラント

プチ・パレの近代版画コレクション

1908年に開設された「近代版画美術館」は、プチ・パレの地上階、シャンゼリゼ通り側の建物にあった。デュテゥイ・コレクションはこの場所で公開されるようになる。その後ラプロウズの呼びかけで、近代版画コレクションの寄贈がされるようになる。

そのなかでもアンリ・ベラルディ (1849-1931) は、近代版画の重要な寄贈者のうちの一人である。そして彼はこの主題についての著作も残している。ベラルディのコレクションは、19世紀の重要人物100人の版画などがある。

またアーティストからの寄贈も寄せられている。そしてこの時期、パリ市は近代版画を支援するためにパリの建物(市庁舎)などの版画を作らせた。これらの作品もプチ・パレに保管されることになる。更にカラーの近代版画を画商のジョルジュ・プチ(1856-1920)が寄付し、コレクションを充実させる。

最後に、近年の重要な寄付として2013年から23年にかけて1289点の近代版画の寄付について触れておこう。そのうちの1136点はピエール・ロッシュの孫から2015年に寄贈された。

このようにパリ市の美術館でありながら、熱心な美術愛好家の好意により世界的にも質の高いコレクションが可能となった。版画は光に弱いので、長期の展示は難しい。なので今回のような企画展がある際は、実物を見に行っていただきたい。そして本物をじっくり隅々まで鑑賞して、新しい発見を楽しんでいただきたい。

参考サイト/プチ・パレ

今月の美術展

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