ルーヴル美術館で開催されている『ダヴィッド』展に行ってきました。
ジャック・ルイ・ダヴィッド(1748年‐1825年)は、フランス近代の激動の時代に活躍した画家だ。今年は彼が亡くなって200年の節目の年なので、この展覧会が企画された。
ダヴィッドは、新古典派の画家として知られている。新古典派とは、ポンペイの遺跡の再発見などから考古学に強く影響を受けたムーブメントだ。そのため絵の主題は、古代ギリシャやローマからとったものが多い。
ダヴィッドの出世作、『ホラティウス兄弟の誓い』も古代ローマから伝わる話である。ローマとアルバ・ロンガの紛争の決着をするため、ホラティウス兄弟が選ばれた。相手は、アルバ・ロンガのクリアテゥス兄弟だ。ここで父に三兄弟は誓う。自分たちには、勝利か死のみであることを。そして勇敢な愛国心の裏には、嘆く女たちもいる。またこの劇の一幕のようなシーンは、簡素な装飾の中に描かれている。
その15年後に制作された『サビニの女たち』は、ローマとサビニの戦いの仲裁を描いている。これはフランス革命後の恐怖政治で引き裂かれる人々に、許しあうことを訴えている作品でもある。
ダヴィッドの肖像画
ダビットは、革命派のロベスピエールと親しかった。そしてジャコバン派の党員として政治に積極的に参加していた。そのため政治思想の違いから妻とも離婚し、ロベスピエールの失脚後、1794年幽閉生活を送ることになる。しかしその翌年恩赦を受け、96年には別れた妻とも復縁している。
自由の身となった画家は、裕福な妻の両親や義理の姉夫婦の支えにより再び創作活動を始める。彼の人生を支えた家族や人々に感謝の気持ちを伝える肖像画は、多く残されている。
ダヴィッドは、肖像画家としても人気があった。そして彼に絵を依頼する顧客は、主に金融界に属していた。その中でも銀行家の夫人、レカミエ夫人は当時その美貌で話題の人であった。しかしダヴィッドが制作した『レカミエ夫人の肖像』は、魅力的な夫人を簡素な装飾の中に描いたと批判され未完成に終わる。
1797年ダヴィッドはイタリア遠征で大勝利を収めたボナパルトに、肖像画制作のため約束を取り付ける。しかし一度のみしかポーズの機会を与えてもらえなかったため、作品は未完成となった。
ナポレオンの主席画家
ダヴィッドのもとには、ナポレオン・ボナパルトの肖像画の注文が多く寄せられた。そして画家は、完成作品を注文主に送る前に同じ作品を自分の手元に残すために自ら複写することもあった。そのため皇帝の肖像画については、複数のバージョンがある。
サン・ベルナール峠を越えるボナパルトは5種類ある。その中でも現在マルメゾン城が所蔵する作品は、スペイン王カルロス4世が注文したものである。天に向かい指をさし、風を受けながら峠を上る未来の皇帝は、誰にも止められない勢いがある。そして足元の岩には、ハンニバル、カール大帝など先代の名将の名が刻まれている。
『書斎のナポレオン』は、スコットランドの貴族が注文し、現在はワシントンのナショナルギャラリーが所有する。ダヴィッドは、この作品を皇帝の前で披露できる日を夢見て自分のためにコピーを制作した。その絵は、現在フォンテーヌブロー城に保管されている。ショートスリーパーで知られるナポレオンの後ろの柱時計は、午前4時を指している。そして卓上ランプのロウソクも一晩燃え続けた後、もうすぐ消えようとしている。
ナポレオンの失脚後、フランスは王政復興の時代が来る。そして革命の時期にルイ16世の処刑に賛成票を投じた彼は、ベルギーへ亡命することになる。
激動のフランス史を最前線で見た画家の作品は、現在世界中の歴史の教科書に紹介されている。
参考サイト/ルーヴル美術館
18世紀のフランス絵画
ルーヴル美術館の情報
Musée du Louvre
『ダヴィッド』展は2026年1月26日まで開催
開館時間 月、木、土、日曜9時から18時、水曜、金曜日は9時から21時45分まで開館、火曜閉館日(チケット販売は1時間前まで、閉館30分前から展示室閉鎖開始)
住所 Rue de Rivoli 75001 Paris
料金 大人22€、18歳未満無料
地下鉄 1番線、7番線Palais-Royal/Musée du Louvre駅、14番線Pyramides
バス 21番、27番、39番、67番、68番、69番、72番、74番、85番、95番
駐車場 1 avenue du Général-Lemonnier 7時から23時(ショッピングセンターCarrousel du Louvre 入口)


