パリのジャックマール・アンドレ美術館美術館で開催されている『アルテミジア・ジェンティレスキ』展に行ってきました。この美術展は2025年8月3日まで公開されています。
アルテミジア・ジェンティレスキはイタリア17世紀に活躍した女流画家。1593年ローマで活躍する画家、オラツィオ・ジェンティレスキの娘として生まれた。そのため絵の技術は父から習い、十代から頭角を現すようになった。また同時期に活躍した画家カラヴァッジョとも交友があり影響を受けている。
才能豊かで順調に能力を伸ばしていったように見えたが、10代後半の時に大きな試練が降りかかる。1611年アルテミジアはアゴスティーノ・タッシという画家をレイプで訴える。タッシは、父親がアルテミジアの私的な教師として雇った人物であった。結果、判決は有罪となったがタッシはローマ教皇の庇護があったので流刑は執行されなかった。この事件後、女流画家はフィレンツェに行きメディチ家やヨーロッパ王室を顧客として活動するようになる。
また彼女は、フィレンツェ・デッサンアカデミーに入会した初めての女性である。アルテミジアは自分の仕事を持ち、経済的独立していた女性でもあった。結婚をし子供もいるが、後に離婚をしている。





カラヴァッジョの影響
17世紀前半イタリアで活動していた画家同様、アルテミジアもカラヴァッジョ(1571-1610)の影響を大きく受けた。カラヴァッジョの画法はドラマチックな光と影のコントラストが特徴である。そして彼は下準備のデッサンなしで、モデルを前にして直接キャンヴァスに絵を描いていたことが知られている。
またアルテミジアはカラヴァッジョと同じ主題を扱っている。旧約聖書の『ホロへルネスの首を斬るユディット』は、長い剣でアッシリアの将軍の首を斬る若い女性を描いた絵である。返り血を避ける様に腕を伸ばして、顔を遠ざけながらも剣で首を斬り続ける勇敢な女性をとらえている。
その他にも『ゴリアテの頭を持つダビデ』など血なまぐさい作品をいくつか残している。これは、彼女の趣向というより当時このような絵が大変好まれていたからだ。同時期にローマとナポリで活動したリベラも、聖人の生々しい殉教の作品を沢山残している。またこのような主題は、カラヴァッジョ風の暗闇の中で人物にスポットライトをあてる構図で効果的に表現された。




アルテミジアの作品の特徴
ジャックマール・アンドレ美術館の企画展のスペースはそれほど広くない。しかし今回は絵画を中心に約40作品が集められた。また大型絵画が近くで見られるので、細かいところまでじっくり鑑賞できる。
後半に展示されている歴史や宗教画のヒロインは、画面いっぱいに描かれている。このような構図は、鑑賞者に主人公たちの心の声を効果的に伝える。そして『ユディットと侍女』では、剣を振りかざし勇敢に振る舞うユディットの我を忘れたような表情が目を引く。また同時に繊細なドレスのレースや刺繍、宝石で飾られた髪により、彼女がまだ若い女性であることを誇張している。
やはりジェンティレスキの娘は、当時の男性画家よりも女性の内面を表現するのに卓越していた。そしてイタリアバロックの流行を取り入れながらも、その枠にとらわれない新たな主題の取り上げ方にも挑戦している。








17世紀絵画の記事
関連サイト
ジャックマール・アンドレ美術館の情報
Musée Jacquemart André
『アルテミジア・ジェンティレスキ』展は2025年8月3日まで開催
開館時間 10時から18時、金曜日は22時、土日は20時まで開館(チケット販売は閉館30分前まで)、閉館日なし
料金 大人18€、65歳以上 17€、学生 15€、7歳から25歳 9.5€、ファミリー料金 49€(大人2人+2歳から17歳2人)
住所 158 boulevard Haussmann 75008 Paris
電話 +33(0)1 45 62 11 59
地下鉄 9番線、13番線 Miromesnil駅、9番線、1番線 Saint-Philippe du Roule駅
バス 22番、43番、52番、54番、28番、80番、83番、84番、93番
駐車場 Haussemann-Berri