パリのルイヴィトン財団美術館で開催されているデイヴィッド・ホックニー展に行ってきました。
1937年にイギリスに生まれたホックニーは、今年の7月で88歳。まだ現役で活躍しており、今回の展覧会のためにも作品を制作している。今回の展覧会では1955年から2025年までの400作品が集められた。彼の初期の作品は油絵、アクリル画、インク、鉛筆、木炭のデッサンなどである。そして21世紀に入ってからははパソコン、iPhone、iPadを使って絵を描いている。また最近では、ビデオ作品にも挑戦する。
400点の作品の展示は、時系列で進んでいく。地下ののギャラリーでは、彼の初期の代表作が紹介される。そして地上階から上は、この25年に制作された作品が続く。また地上階からは各部屋、テーマごとに作品が集められる。例えば、ヨークシャーの風景、ノルマンディー地方の風景、そして肖像画、花瓶の花など、部屋の全面が絵で埋め尽くされている。


風景画、自画像、静物画
ホックニーは60年代POPアートの芸術家としも知られる。というのも64年からカリフォルニアで制作したプールを主題にした、アクリル画が成功を収め有名になったからだ。彼は、70年代前半をパリで過ごした。その後、78年カリフォルニアに戻り2005年にはイギリスのヨークシャーに移る。ヨークシャーは、彼が子供時代に慣れ親しんだ場所であった。
ホックニーは、ヨークシャーで大型の風景画を制作した。そして2019年から2013年をフランスのノルマンディー地方で過ごし、ここでも風景画を描いた。これらノルマンディー地方の風景画の一部(2020、220シリーズ)は、iPadのみを使用していた。
またホックニーは親友の肖像画や自画像も沢山制作している。ここには約60点のiPadで描かれた肖像画が並ぶ。そして花瓶の花を描いた連作もiPadで完成させられた。またこれらiPad絵画を額縁に入れられて並べ、その様子を見ている作者のフォト・ドローイングの大型作品も同じ展示室で見ることができる。


古典絵画からの影響
最後に、ホックニーが過去の巨匠から着想を得た作品が紹介されている。彼は、イタリアルネッサンスや17世紀オランダ風景画を自分なりに解釈し、同じ主題の作品を制作している。フラ・アンジェリコの受胎告知の遠近法は、どのようにしてこの均等を作り上げたのか。そして明るいオレンジの色使い、青い背景と茶色の床の面積のバランスも絶妙に計算されている。また後期印象派セザンヌの『カード遊びをする人々』から派生したフォト・ドローイングも展示されている。
70年の間、尽きない創作エネルギーを肌で感じられる展覧会だった。そして常に新しい技術に挑戦し、その可能性を追求する精神には感服する。


『デイヴィッド・ホックニー』ルイヴィトン財団美術館の記事
ルイヴィトン財団美術館の記事
ルイヴィトン財団美術館の情報
Fondation Louis Vuitton
デイヴィッド・ホックニー展は8月31日まで開催
開館時間 月、水、木、金 12時から19時、土、日曜 11時から20時(チケット販売は30分前まで)、閉館日 火曜日
料金 大人16€ 学生、教員、25歳以下10€、17歳以下5€、ファミリー料金32€(大人2名まで+子供4名まで)
住所 8 Avenue du Mahatma Gandhi, Bois de Boulogne, 75116 Paris
地下鉄 1番線Sablons駅から950m
バス 73番La Garenne-Colombes-Charlebourg
シャトルバス ルイヴィトン財団美術館の開館時間帯20分間隔で運行 停留所は44 Avenue de Friedland, 75008 Paris(地下鉄、RER線のCharles de Gaulle Etoile駅の2番出口前)