パリのジャックマール・アンドレ美術館で開催されている『ボルゲーゼ美術館』展に行ってきました。
今回の展覧会では、ローマにあるボルゲーゼ美術館の主要絵画が貸し出された。ボルゲーゼ美術館は、イタリアルネッサンス、バロック絵画、彫刻で有名だ。普段は貸し出しがされない、ボッティチェリ、カラバッジョ、ラファエル、テッツィアーノなどの絵画を観賞できる。なお彫刻作品は運搬が困難なため、今回はあまり展示されていない。
今回の特別貸し出しは、ボルゲーゼ美術館の改装工事のため可能となった。


ボルゲーゼコレクションの始まり
1605年から21年までローマ教皇であったパウロ5世の甥にあたる。シピオーネ・ボルゲーゼ(1577年‐1633年)がボルゲーゼ美術館の始まりになる。
彼は枢機卿という立場を利用して時には強引に名作を集めたと言われる。この人物には幸い優れた審美眼と潤沢な資金があった。しかし人気作家の作品は、大金を積んでも手に入らない。そのため目当てのものを手に入れるために強盗、強制没収をもした。そして作品を譲らないからという理由で投獄された者もいた。
シピオーネ・ボルゲーゼはローマで活躍する作家だけでは満足しなかった。ローマではラファエロ、カラヴァッジョの作品を購入。フィレンツェはボッティチェリの聖母マリア像を手に入れる。そしてヴェネチアからはテッツィアーノの作品を取り寄せる。彼はこの時代のイタリア美術を広範囲で集める。またルーベンスなど当時欧州で名がはせていた巨匠の作品も網羅する。
今回は貸し出されなかったが、この美術館のベルニーニの彫刻コレクションも傑有名だ。ベルニーニはヴァチカンの祭壇を当時作った芸術家。『アポロンとダフネ』や『プロセルピーナの略奪』などがよく知られている。


ボルゲーゼコレクションのその後
シピオーネ・ボルゲーゼは、近代美術史の中で最も重要な美術収集家でメセナでもあった。彼のこのような情熱は、自分の邸宅を美術館に匹敵する場所に変えてしまった。当時まだ美術館がない時代に、一か所に集まった一流の芸術作品を見ることは来訪者に衝撃を与えたであろう。
彼が亡くなった後も、その遺言により200年の間コレクションが分散されることはなかった。そしてシピオーネ・ボルゲーゼの子孫は、バロック時代にもコレクションを豊かにしていった。
19世紀になると末裔のカミッロ・ボルゲーゼはナポレオンの妹ポリーヌと結婚をする。そしてボルゲーゼ家の古代彫刻コレクションがまとめてナポレオンによって購入される。これらの作品は今ルーヴル美術館の古代ギリシャ・ローマコレクションの主要作品になった。その中でも『グラディエーター』などのギリシャ時代のオリジナルの作品は大変に貴重なものだ。ベルニーニがベットを付け加えたローマ時代の『ヘルマプロディートス』もその一つである。
ボルゲーゼ美術館の改装工事のため特別貸し出された今回の作品は、ローマ以外で見ることは難しい。今度は、今回見れなかったベルニーニの彫刻コレクションを是非ローマに見に行きたいと思った。


参考サイト/ジャックマールアンドレ美術館
ルネッサンス美術展の記事
ジャックマール・アンドレ美術館の情報
Musée Jacquemart André
『ボルゲーゼ美術館』展は2025年1月5日まで開催
開館時間 10時から18時、金曜日は22時、土日は20時まで開館(チケット販売は閉館30分前まで)、閉館日なし
住所 158boulevard Haussmann 75008 Paris
電話 +33(0)1 45 62 11 59
地下鉄 9番線、13番線 Miromesnil駅、9番線、1番線 Saint-Philippe du Roule駅
バス 22番、43番、52番、54番、28番、80番、83番、84番、93番
駐車場 Haussemann-Berri