パリのポンピドゥーセンターで開催されていた『ジル・アイヨー展』に行ってきました。
ジル・アイヨーは、1928年にパリで生まれ2005年に亡くなった画家である。彼の父親のエミール・アイヨーは建築家であった。
彼は「新しい具象(ニュー・フィギュラティヴ)」の画家と言われた。ニュー・フィギュラティヴは50年代の抽象画と対峙する、主題を具体的に描いていく表現方法のことを言う。


動物画家ジル・アイヨール
ジル・アイヨーは小さいころから絵を描く少年であった。大学では、哲学を専攻した。そして彼は政治にも大きな関心を寄せ、68年5月の学生運動や、ヴェトナム戦争の絵も描いている。
しかし彼の代表作は、やはり動物画であろう。彼は植物や鉱物など生命全般に興味を持つ画家であった。そしてケニアまで行き『すべての動物と鉱物の百科事典』の制作に挑む。また彼は、演劇の装飾や演出も手掛けることもあった。
アイヨーはなぜ動物、空、海、浜辺、砂漠など自然や野生の主題を描き続けたのか。それは、彼が生命は全て平等と考えていたからだ。彼の絵の中の動物園にいる生き物は、人間の娯楽のために自然環境から引き離されていることを明らかにする。またそれを伝えるためにアイヨーの絵には、檻があり、柵がある。


生き物の自由について考えるアイヨーの絵
彼の絵の中には、動物だけでなくその生活環境も描かれている。というのも本来野生動物が生きる環境には、屋根や壁がない。そしてこれらの要素を動物と同じくらい精密に描くことにより、絵の中心の動物と同じ重要性を持たせることができる。
人間は動物園で野生の動物を見に来る。しかしこれらの生き物が本来の生活環境にいない、ということを見落としがちだ。この矛盾をアイヨーは絵の中で訴えている。


参考サイト/ポンピドゥーセンター
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2030年まで工事で休館