ギャラリー・ゴブランで開催されている『フランス最後の戴冠式』に行ってきました。
フランスの人気テレビ司会者で王室の歴史に詳しいステファン・ベルンが携わった、話題の企画展。フランス最後の戴冠式を行ったシャルル10世が実際に使った、豪華な衣装や装飾品などが集められている。そして戴冠式やそれに伴うセレモニーが再現された部屋は、実際自分がそこに立ち会うよな気分を味わえる。下の写真はフランス北東部の地方都市、ランスにある大聖堂で行われた戴冠式の装飾を再現している。この教会では、フランス歴代の王の戴冠式が行われた。フランス最後の戴冠式は今から200年前の1825年5月29日に挙行される。


フランスの王政復興、限られた予算でのセレモニー
展示の最初は先代の死、ルイ18世の国葬から始まる。豪華な装飾品から考えにくいが、これらは再利用されたものである。というのもフランス革命後は、議会が国家行事の予算を取り決めていたからだ。そして同じ用途に使用する装飾品は、イニシャルの刺繍などを取り換えることにより制作時間の短縮にもなる。例えば1824年ルイ18世の国葬で棺の上に配置された天蓋は、1860年ナポレオン1世の弟ジェローム・ボナパルトが亡くなった際に再利用された。本来は王家の紋章百合の刺繍がされていたが、ナポレオン家の葬儀の際は死者の魂をかたどった銀の刺繍に取って代わった。
王政復興の最初の王、ルイ18世は戴冠式を行うことができなかった。しかしシャルル10世の戴冠式は、各国の大使を招き豪華に行われた。
また戴冠式の期間、王や招待客が食事をしたテーブルも再現されている。5日間で7000食が国の費用でまかなわれた。
戴冠式を終えた王は、サン・エスプリ騎士団の任命式を行う。その任命式に参加した騎士団の華やかな衣装も展示されている。
最後に戴冠式に参加した招待客(各国大使など)に配布した、贈呈品も見ることができる。フランスのロマン派作家ヴィクトール・ユーゴーも、セーヴル焼の皿を頂いている。








ゴブランに収められていた王室工芸品のサンプル
今回の企画展が行われているギャラリー・ゴブランは、1662年(ルイ14世の時代)に王立の工芸品製作所となる。特にゴブラン織りと呼ばれるタペストリーが有名である。このアトリエは歴代の王家の家具やセレモニーで使用した装飾品、それらのサンプル生地などを保管している場所でもある。
そのため今回の展覧会では、王室が注文した刺繍も公開されている。ここではシャルル10世が滞在した、ランス大司教公邸の応接室の布クロス(壁紙)の見本品がある。シルクの布の半分は金属糸(糸に薄い金の箔を入れたもの)の刺繍がされている。もう一つはシャルル10世のイニシアルの刺繍。こちらは金属繊維なのでずっしりと重量感がある。そしてシャルル(Charles)のCがふたつ重なって、ローマ数字の10(X)になっている。
フランス革命の後でも贅沢な工芸品の技術が受け継がれていることに驚かされた。各国の大使をもてなした戴冠式は、フランス職人の技術と知恵が支えていたのだと思う。


参考サイト
美術工芸品に関する記事
ギャラリー・ゴブランの情報
Galerie Goblin
※『フランス最後の戴冠式』展は7月20日まで
開館時間 火曜から日曜11時から18時(チケット販売は17時15分まで)、5月1日休館、5月17日は19時から23時まで開館(La nuit des musées)
住所 32 Av. Gobelins, 75013 Paris
電話 +33 (0)1 44 08 53 49
料金 大人8€、学生7€、18歳以下無料
地下鉄 7番線Goblins駅、5、6番線Place d’Italie駅