美術とスポーツ、オリンピックイヤーの展覧会
マルモッタン美術館で開催されている『アーテイストとスポーツ(1870-1930年)』展に行ってきました。オリンピックイヤーの今年はスポーツがテーマの企画展が多く開催されています。
近代オリンピックは、フランスの教育者クーベルタンの呼びかけにより設立された。そして1896年の第一回開催地にアテネが選ばれる。
スポーツは19世紀にイギリス貴族から始まり、ヨーロッパ大陸、そしてアメリカに広がった。その後、20世紀に入り大衆もスポーツ観戦をしたり参加するようになる。
また絵画の分野では、この時代、印象派が野外写生を盛んにおこなっていた時期だ。印象派は人々の余暇(スポーツを含む)を好んで描いていった。そのため、印象派の作品を沢山所蔵するマルモッタン美術館はスポーツを軸に企画を練っていった。


スポーツが絵の主題に
印象派の画家たちは、社会の変化に素早く目を向け、余暇としてスポーツをする人々を描いていった。また野外でスポーツをする人たちは、外でキャンヴァスを立てて絵を描く彼らのモデルに最適であった。そして人々が自由に体を動かす様子は、印象派以外の画家も題材とした。印象派では、ギュスターヴ・カイユボットやアンリ・ド・トゥールーズ・ロートレックの作品に見ることができる。それに加え、トマス・エイキンズ、ギュスターヴ・クールベ、ジャン・メッツァンジェ、ロベール・ドローネーなどの作品にも、近代的な人々が生き生きと運動している様子を見ることができる。
19世紀半ば、労働条件の改善に伴い時間に余裕ができ人々は、余暇やスポーツを楽しむ。そしてスポーツをする習慣は、イギリスから欧州に広がっていた。最初は、乗馬などの貴族のスポーツから、すべての年齢の大衆が楽しめるサッカーなどの運動に広がっていった。
またスポーツは、社会的、政治的にも重要性を増していった。というのも運動は、健全な精神と身体を保つために必要なものだからだ。それに加え、フェアプレー精神、身体能力を向上させる努力、チームプレイの大切さなどを培うことができる。このような魅力に惹かれ、スポーツをする人観戦をする人々も増えていく。そしてそのような光景も絵に描かれている。


19世紀のスポーツと女性
19世紀のスポーツは男性が主役であり、英雄的、男らしいというイメージあった。そしてラグビーやボクシングなどの荒々しい運動は女性には適さないと思われていた。そのため女性は、素晴らしいパフォーマンスをする男性の応援役にとどまっている。または、優勝者にトロフィーを渡す存在でしかなかった。
そんな女性がオリンピックに参加し始めたのは1900年であった。だがクーベルタンは女性の身体能力に疑問を抱いていた。幸いに彼の考えとは裏腹に、フィールドホッケー、ローンテニス、ゴルフなど女性に解放される競技は増加していった。
そのころスポーツをしている女性の様子は、ダンスをしているように描かれている。体の動きより、女性の優雅さや、しなやかに揺れる洋服などが強調されている。
絵画の主題になった事からも、スポーツは19世紀後半には大衆の人気を集めたことを物語っている。スポーツをする人だけでなく、それを観戦する人々も絵の中に描かれていることから、そのインパクトの強さが分かる。限られた人しか対象でなかった時代から、どれだけ社会の価値観が進歩していったかもわかる展覧会であった。

参考サイト/マルモッタン美術館
スポーツがテーマの企画展
マルモッタン美術館の情報
Musée Marmottan Monet
開館時間 火曜から日曜10時から18時(チケット販売は17時まで)、木曜日は21時まで開館(チケット販売は20時まで)、展示室は閉館15分前に閉鎖、閉館日 月曜、5月1日、12月25日、1月1日
住所 2, rue Louis-Boilly, 75016 Paris – France
電話 + 33 (0)1 44 96 50 33
地下鉄 9番線La Muette駅またはRanelagh駅
電車 RERのC線Boulainvilliers駅
バス 22番線La Muette – Boulainvilliers、32番Louis Boilly ou Ingres、52番La Muette – Boulainvilliers、63番Porte de La Muette、70番Louis-Boilly ou Ingres、PC1番Ernest Hébert ou Porte de Passy
駐車場 Vinci Park Passy (78, rue de Passy, 75016 Paris)