宝石盗難事件があったアポロンのギャラリーの歴史
本日は、2025年10月19日にルーブル美術館で起こった宝石盗難事件があったアポロンのギャラリー(Galerie d’Apollon)についてお話しします。
ルーヴル美術館のアポロンのギャラリーには、歴代の権力者の宝が展示されています。この回廊は、ヘンリ4世(1553-1610)の時代に設えられました。しかし1661年、孫のルイ14世の時代に火災があり、この時代のものは消滅してしまいます。
ルイ14世は、このギャラリーを再建するにあたり建築家ルイ・ル・ヴォーに工事を依頼します。ルイ14世、23歳の時でした。そして彼は、この回廊のエンブレムに太陽を選びます。その結果、ギリシャの太陽神、芸術の神アポロンが、このギャラリーの名前に選ばれました。
アポロンのギャラリーの装飾
ギャラリーの装飾については、ルイ14世の主席画家、シャルル・ルブランが選ばれました。この初の王室ギャラリーは、その20年後に完成するフランス古典美術の見本となります。ヴェルサイユ宮殿の鏡の間は、アポロンのギャラリーをモデルとして誕生しました。
ルブランは天井画の主題に、天上で馬車の競争をするアポロンを選びました。そしてその周りに、太陽から影響を受ける時間、季節、星座、大陸などを配置します。これらの脇役は、宇宙全体を構成する要素を意味します。また彼は、これらの物語を絵だけではなく彫刻も交えて表現しました。この力強い装飾は、宇宙を支配する太陽の力を表明しています。さらに言うとアポロンを通して、ギャラリー全体がルイ14世の栄光を称えていることになります。
しかし天井画が完成しないうちにルイ14世は、ヴェルサイユ宮殿に住居を移してしまいます。そのため未完成の中央の天井画は、19世紀になってからドラクロワが引き継ぐことになります。ロマン派画家が描いた『大蛇ピトンを倒すアポロン』は1850年に完成されました。
宝石コレクション
ここには、ルイ14世の天然鉱物の工芸品や19世紀の宝石が展示されています。太陽王は、天然鉱物を器にし、金属の取っ手や装飾を加工した工芸品を約800点蒐集します。
展示品で有名な宝石は、『レジャン』と呼ばれる140カラットのダイヤモンドです。この宝石はルイ15世、マリーアントワネット、そしてナポレオン1世に使用されました。そして『アジサイ』と呼ばれる5角形のピンクの21カラットダイヤモンド。お花のように可愛らしい淡いピンク色が魅力的です。
その他にもルイ15世の王冠、ナポレオン3世の皇妃ウジェニーの王冠、アングレーム公爵夫人のエメラルドのティアラ(19世紀、王政復興時代)が、当時のショーケースに並んでいます。それに加え、ポレオン1世皇妃ジョゼフィーヌのダイヤモンドをあしらったリボンの形の装飾品、彼の二人目の皇妃マリー・ルイーズが所有していたエメラルドのネックレスとイヤリング、19世紀のルイ・フィリップの王妃のサファイヤの装飾品セットも見ることができます。
フランスの歴史がつまった大事な文化財、早く帰ってくることを祈っています。
参考サイト/ルーヴル美術館
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ルーヴル美術館の情報
Musée du Louvre
開館時間 月、木、土、日曜9時から18時、水曜、金曜日は9時から21時45分まで開館、火曜閉館日(チケット販売は1時間前まで、閉館30分前から展示室閉鎖開始)
住所 Rue de Rivoli 75001 Paris
料金 大人22€、18歳未満無料
地下鉄 1番線、7番線Palais-Royal/Musée du Louvre駅、14番線Pyramides
バス 21番、27番、39番、67番、68番、69番、72番、74番、85番、95番
駐車場 1 avenue du Général-Lemonnier 7時から23時(ショッピングセンターCarrousel du Louvre 入口)


