ルーヴル美術館で開催されていた『マムルーク』展に行ってきました。
今回の企画展は、1259年から1517年に謳歌したマムルークのイスラム美術を紹介している。マムルークは、イスラム教の圏外から連れて来られた(または買い取られた)奴隷出身の軍人である。主にトルコ、後にコーカサスの出身者が多かった。彼らは、イスラム教に改宗させられ、宗教、軍事の教育を受ける。そして成人すると奴隷身分から解放される。
この時期、マムルークは中東では伝説的な強さを誇っていた。彼らは、西洋の十字軍を破り、モンゴルの軍隊を追い払った。そしてエジプト、シリア、イスラエル、パレスチナ、ヨルダン、メッカ、マディーナまでを支配していた。
ルーヴル美術館とパリ装飾美術館の所蔵品が3分の1を占める、今回の展覧会は写本、陶器、象牙彫刻、ガラス工芸品、木製、石の彫刻など、260点が集められた。


エリートと裕福層のイスラム美術
マムルーク美術は、その豪華さで人々の目を引く。というのもこのイスラム美術は、スルタンと密接に関係するエリートの美術であった。これらは、高価な素材を使用し美しい色使いが特徴であった。そして同一の幾何学模様や花柄を無限にパターン化し、それを囲む枠と対比させている。
またマムルーク美術装飾には、複数の意味が隠されている。そのため一目見て理解することは難しく、注意深く観賞する必要がある。特に複雑な幾何学模様と文字模様には、複数の意味が重なり合い絡み合う。
これらの装飾には、イスラム教の言語であるアラビア語が使用されていた。このことからマムルークが地域の言語を尊重し、その土地の文化に溶け込もうとする意志がうかがえる。そこには、アラビア語を話すエリート階級の市民と軍人である自分たちの間に、強力な関係を築く狙いもあった。


ルーヴル美術館のイスラム美術品の至宝
展示室の最後には、ルーヴル美術館のイスラム美術の至宝2点が紹介されていた。
マムルーク時代に制作された美術品の中で最も重要な、『ルイ9世の洗礼盤』は、謎に包まれた作品でもある。この金属容器には、マムルーク美術の特徴である献上された者の名前が彫られていない。その代わりに『イブン・アル・ザインの作品』という作者のサインが6か所に刻まれている。この人物については、文献では知られていない。
この容器には、マムルーク宮廷の活動がフリーズの様にひと続きで描かれている。これらの行列は、メダルに囲まれた装飾によって区切られている。
またこの作品がどのような経緯でフランスに来たのかはわからない。この至宝が最初に王室の文献で紹介されたのは15世紀である。そして1606年にルイ8世の洗礼で使用されたと記載された後、1791年に文化財として登録されるまで空白となっている。この工芸品には、歴代の王の中でも人気の高いルイ9世(聖ルイ)の名が1793年、ルーヴル美術館に所蔵される際につけられた。
二つ目のルーヴル美術館の至宝も金属工芸品で、水を飲むための容器であった。マムルーク美術は、貴重品である金属に細かな彫刻を施したものを得意とした。この作品もイブン・アル・ザインの名前刻まれている。
イスラム美術は、アラビア語が使用されているために語学が理解できないと鑑賞が難しい。しかし今回の展覧会はマムルークの歴史と合わせて紹介していたので、その経緯や発展が分かりやすかった。


参考サイト/ルーヴル美術館
ルーヴル美術館の記事
ルーヴル美術館の情報
Musée du Louvre
『マムルーク』展は2025年4月30日から7月28まで開催
開館時間 月、木、土、日曜9時から18時、水曜、金曜日は9時から21時45分まで開館、火曜閉館日(チケット販売は1時間前まで、閉館30分前から展示室閉鎖開始)
住所 Rue de Rivoli 75001 Paris
料金 大人22€、18歳未満無料
地下鉄 1番線、7番線Palais-Royal/Musée du Louvre駅、14番線Pyramides
バス 21番、27番、39番、67番、68番、69番、72番、74番、85番、95番
駐車場 1 avenue du Général-Lemonnier 7時から23時(ショッピングセンターCarrousel du Louvre 入口)