ケ・ブランリ美術館の古代メキシコ展に行ってきました。
1978年2月メキシコシティにて地下の電気工事の最中に、メソアメリカ文明最大の発見がされた。そこは、かつてのアステカ帝国 (1325-1521) の首都テノチティトランであった。そしてテンプロ・マイヨール神殿とその聖域がそこに建てられていた。最初に見つかった直径3メートルの円盤は、コヨルシャウキの石板であった。これは、ウィツィロポチトリの誕生伝説に登場する女神である。
今回の展覧会では、46年に及ぶ発掘とその研究成果を紹介する。そして展示されている204点の奉納品を通して、古代メキシコの世界観を体験できる。


古代メキシコの犠牲の儀式
16世紀のコンキスタドール、エルナン・コルテスは、カール5世にあてた手紙の中にこう報告している。「毎日、彼らは何かを行う前にこの神殿の中で香をたく。そして時々、自分自身を犠牲にする。それは、舌を切ることもあれば、耳を切断する時もあった。」
メソアメリカの人々は、香と流された血を神に捧げる。自らの血を捧げることは、最も頻繁に行われていた神への贈り物で、神に鋭気をあたえる。この犠牲の行為は、すべての人が行っていたが、特に責任のある職、君主、司祭、行政官が率先して血を流した。彼らは、黒曜石の刀、アガベ針(植物)や鷲やジャガーの骨で作った穴あけ機などを使用して出血していた。
犠牲の血は「貴重な水」と呼ばれていた。そしてその液体は、人間の犠牲によって得られることもある。この儀式は、宗教儀式のクライマックスに行われていた。またテンプロ・マイヨール神殿の神々の祭壇の前では、犠牲儀式の石が発見されている。この石の上で祭司が犠牲者の心臓を、細い刃物を使って取り出していた。その後、この臓器は神に捧げる大型の石の壺の中で燃やされる。また流された血は大地の女神に与えられ、集められた液体は神の(形をした)口に塗られた。


古代メキシコの神に捧げられた品々
神への贈り物は、人間が水や太陽熱、植物や動物を摂取する代償として払われていた。奉納されたものの多くは、植物などの腐敗するものであった。
その中でも埋葬された儀式の奉納品は、様々な品々がひとまとめに収められていた。このような贈り物は、新しい建築をする際、またはその落成式、大事な儀式の際に行われた。今回の発掘で発見された埋葬品は、1325年から1521年のテンプロ・マイヨール神殿の拡大工事の際のものである。それは、発掘現場北部の雨や農業の神の神殿と、南部の太陽と戦争の神殿の工期と重なり合う。
この埋葬品はいくつもの層から作られ、宇宙の層を表現していた。一番下の層は砂の上に星座の様に貝殻やサンゴ、ヒスイのパールなど海を想像するものが配置されている。次に大地を表す層をノコギリエイの骨やワニの皮で作る。一番上の層は、空で鷲や他の猛禽類などが使われていた。これらの埋葬品は、神に対する贈り物だけではなく、古代メキシコの世界観を表現していた。
半世紀にわたる発掘は、文献で知られていた歴史にインカ帝国の文化情報を補足した。また発掘品から生々しい犠牲の儀式の様子が伝わってきたり、埋葬品から古代メキシコの世界観を見ることができ、新しい発見が多い展覧会であった。


参考サイト/ケ・ブランリ美術館
今月の展覧会
ケ・ブランリ美術館の情報
Musée du Quai Branly
『古代メキシコ』展は2024年10月6日まで開催
開館時間 火曜から日曜10時30分から19時(チケット販売は18時まで)、木曜日は22時まで開館(チケット販売は21時まで)、閉館日 月曜日
住所 37, Quai Branly , 75007 Paris
電話 +33(0)1 56 61 70 00
地下鉄 9番線 Alma Marceau駅
RER C線 Pont de l’Alma駅
バス 42番、63番、80番、92番