『ギュスターヴ・カイユボット』オルセー美術館

船遊び、1877‐78年 オルセー美術館
船遊び、1877‐78年
この記事は約5分で読めます。

オルセー美術館で開催されている『ギュスターヴ・カイユボット』展に行ってきました。

カイユボット(1848年‐1894年)は、当初印象派のコレクショナーとして知られていた。しかし1994年のグラン・パレの回顧展より、彼の絵画作品も再評価され始めた。

今年はカイユボットが亡くなってから130年になるので、大規模な回顧展が企画された。そして今回の展覧会は、男性のモデルを沢山描いた作品を集めている。カイユボットの父は資産家であり、息子たちの創作活動を応援していた。そのもう一人の息子マルシャル(ギュスターヴの弟)は、音楽家であった。しかし父はカイユボットが26歳の時に多額の資産を残して亡くなる。その後、経済的な心配がなかった彼は、家族や友人をモデルとした日常生活を主題にしていった。

カイユボットは、絵画以外にもヨットや切手コレクション、園芸など多趣味の人であった。彼は結婚はせず、子供もいなかったため自分の好きなことに時間とお金を使っていた。他の画家は、生活のために肖像画を描いたり自分の配偶者や子供をモデルにしている。しかしカイユボットは、男同士の付き合いが多かったため自然に男性モデルが多くなったのだろう。

カード遊び、1881年頃
カード遊び、1881年頃(右側に弟のマーシャル、独身男性が集まりカイユボット家でトランプに興ずる)
昼食、1876年
昼食、1876年(カイユボットの母と弟のルネ、父親が74年に亡くなっているので喪に服している)

印象派の画家カイユボット

カイユボットは法律の勉強をした後、美術学校に入学し絵画の勉強をするが1年で中退する。彼は1875年に『床削り』を官展に出すが落選する。この作品は、日常生活の風景を写実的に描いたことで批判を受けた。そしてこの出来事に失望したカイユボットは、二度と官展に絵を出品することはなくなった。その後ドガなどの印象派の知り合いを通し、印象派展に加わることになり、1877年第2回目の印象派展に作品を発表した。カイユボットは79年、80年、82年と計4回、印象派展に参加し、経済的にも支援した。

またカイユボットは他の印象派と同様、近代化するパリの街並みを描いていった。彼の絵の中では、オスマン通りやヨーロッパ橋の鉄橋をシルクハットを被った男性たちが歩いていく。彼は、このような日常生活の一面を大きなサイズのキャンヴァスで描き、複雑な空間構成を作り上げ、引き込まれるようなフレーミングで絵に現実性を持たせている。そしてカイユボットは、このようなブルジョワ階級の人々を描いた傍ら、床削りやペンキ塗りなどの労働階級も主題としていった。

カイユボットは印象派の画家との交友があったため、経済的に困っている画家たちを助けることもあった。そしてセザンヌ、ドガ、モネ、ピサロ、ルノワール、シスレなどの作品を買い上げ、死後に国に寄付をした。

パリの通り、雨、1877年
パリの通り、雨、1877年
ヨーロッパ橋、1876年
ヨーロッパ橋、1876年

趣味の人、カイユボット

カイユボットの弟、ルネは25歳で亡くなっている。そのためギュスターヴも自分の人生も長くないのではないかと思っていたらしい。実際、彼も45歳で亡くなっている。

カイユボットは絵画以外にも、ボートにも興味を持ち、自分が漕ぐだけでなく設計もするようになる。パリ郊外のイエールの別荘には川が流れおり、夏の間ボート遊びをしていたのがきっかけであった。またこの時代、労働条件の改善などにより人々が余暇の時間を楽しむようになっていた。余暇の主題は、他の印象派の作品にも描かれている。

カイユボットは1886年から絵を描くことが少なくなる。そして2年後からは園芸と夏のレガッタのみに時間を費やす。その後、1894年彼は脳卒中で亡くなる。画家は遺言書により、自分のコレクションを国に寄付すると定めていた。この役目を任された弟ルネは、印象派作品をルーヴル美術館に寄付するため大奮闘する。最終的に70点ある作品の中、40点のみが国に受け入れられた。これが今、私たちがオルセー美術館で見れる印象派の傑作作品の一部となっている。

自らも優れた画家であったが、当時知られていなかった印象派の作品の価値を見極めた審美眼の持ち主でもあった。しかし、こうしてまとめて彼の作品を見ると、印象派の特徴も沢山備えていることが分かる。そして彼独自のフレーミング技術からできた没入型の絵は、彼が一番臨場感を持って表現できていたと改めて思った。

ボートをこぐ男、1877年
ボートをこぐ男、1877年
バラ、プチ・ジュヌヴィリエの庭、1886年頃
バラ、プチ・ジュヌヴィリエの庭、1886年頃

参考サイト/オルセー美術館

印象派の記事(2024年)

オルセー美術館の情報

Musée d’Orsay

『ギュスターヴ・カイユボット』展は25年1月19日まで開催

開館時間 火曜から日曜9時30分から18時、木曜日は21時45分まで開館、閉館日 月曜日

住所 Esplanade Valéry Giscard d’Estaing 75007 Paris 

料金 大人(18歳以上)日時指定予約16€、大人当日券14€、18歳未満無料、

地下鉄 12番線Solférino駅、RER C線Musée d’Orsay駅

バス 63番、68番、69番、73番、83番、84番、87番、94番

駐車場 Carrousel du Louvre、Bac Montalembert 

タイトルとURLをコピーしました