『テオドール・ルソー』プチ・パレ

コンピエーニュの森の中 ピエールフォン村近くの野原 1833年 テオドール・ルソー 美術展
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パリのプチパレで開催されていた『テオドール・ルソー』展に行ってきました。

テオドール・ルソー(1812年‐1867年)はパリ郊外のバルビゾンの森で風景画を描いてた。当時、携帯に便利な絵の具が開発され、野外写生画が容易にできるようになり、バルビゾンの森には画家が集まった。その為これらの画家は、バルビゾン派と呼ばれている。バルビゾン派で有名画家は、カミーユ・コローである。彼は1822年からこの地で活動している。

ルソーはなぜバルビゾンに行ったのか。彼は1831年、33年、35年まではサロンにて作品を発表していた。しかし1836年から48年まで落選が続くようになる。この時期に、画家は静かなフォンテーヌブローやバルビゾンの森に行き野生の木々を描くようになる。

またこの地では、コンスタン・トロワイヨンやジャン=フランソワ・ミレーなどが既に活動をしていた。前者は牧歌的な生活の静けさを描き、後者は農民の労働の地を称える。そしてルソーは手つかずの自然をキャンバスに写し取っていた。

そして近隣のフォンテーヌブローの森には、作家のギュスターヴ・フローベール、ジョルジュ・サンドがいた。この地では、画家同士だけでなく作家との交流もあった。

春 1868年‐1873年 ジャン・フランソワ・ミレー
春 1868年‐1873年 ジャン・フランソワ・ミレー
沼で水をのむ牛 1853年 トロワイヨン
沼で水をのむ牛 1853年 トロワイヨン

テオドール・ルソーと環境保護

テオドール・ルソーは野外で沢山の習作を制作した後、アトリエで作品を完成させる。そして彼は、作品制作の過程で様々な実験をした。画材にアスファルトを使用した作品もあったが、このような絵は痛みやすく修復が困難である。

ルソーは絵画制作をしていくなか、彼がいる森の木が伐採されて行くのを目にする。同時にこの時期、鉄道の開通とともにパリからの観光客も増えていく。その結果ルソーは、この森の自然破壊が進んでいることに気が付く。彼の描く絵は、手つかずの自然の風景が殆どで、人間が描かれることはほとんどない。しかし今、その手つかずの自然が変化しつつあることに危機を感じる。

ルソーは、人間を含む自然の要素すべてに神が宿ると信じる。また彼は、人間は自然の上に立つものではないと考える。それほどまでに自然を愛していた風景画家は、芸術の名のもとにこの森の保護活動を始める。そしてこの地の芸術家たちとフォンテーヌブローの森を保護するために政府に訴える。その結果、フォンテーヌブローの森1861年にフランスで初の芸術保護区に指定された。

フォンテーヌブローの森の木 1640年‐1849年 テオドール・ルソー 
フォンテーヌブローの森の木 1640年‐1849年 テオドール・ルソー 
イル・アダムの森 大通り 1849年 テオドール・ルソー
イル・アダムの森 大通り 1849年 テオドール・ルソー

テオドール・ルソーの作品の特徴

ルソーの風景画は、他の画家の作品とどこが違うのか。

まず彼の作品に描かれている光には力強さがある。ルソーは、朝または夜の光が村を照らし、その反射をとらえる。夏の強い日差しが地面や木々、生き物を容赦なく照り付ける様子を力強く表現する。

そしてルソーの絵の中の森の木は、強い存在感を持ちつつも、鑑賞者に安らかな気持ちを連想させる。彼の描く木々は、力強く安定し安心感がある。完壁でもなく理想的な形でもない、自然な植物は人々に安らぎを与える。

またルソーは、光が反射する葉、焼けた枯れ葉、葉のない枝などの細部に細心の注意を払っていた。これは17世紀のオランダ画家ヤコープ・ファン・ロイスダールからの影響と言われている。この細部へのこだわりは、多様な筆のタッチや絵の具の盛り上がりからできる反射など、様々な技術を駆使して作り上げられた。大きな木を作り上げるための小さな魔法が隠されていたのである。

ルソーは、野外写生や光の表現の仕方など技術的な面で印象派に重要な影響を与えた。普段これだけの量の風景画を一度に見ることはないので、そぜぞれの風景画家の特徴も良く分かり貴重な体験ができた。

オークの木の群れ アプルモン 1855年 テオドール・ルソー   
オークの木の群れ アプルモン 1855年 テオドール・ルソー

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プチ・パレの情報

Petit Palais

『テオドール・ルソー』展は7月7日まで開催

開館時間 火曜から日曜10時から18時(チケット販売は17時15分まで、17時45分より庭と展示室の退室案内開始)、1月1日、5月1日、11月11日、12月25日閉館

住所 Av. Winston Churchill, 75008 Paris

電話 +33(0)1 53 43 40 00 (開館日の午前10時から18時まで)

料金 常設展無料

地下鉄 1番線13番線Champs-Elysées-Clemenceau駅、9番線Franklin D.Roosevelt駅

鉄道 RER C線 Invalides駅

バス 28、42、72、73、80、83、93

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